限界は環境によって作られる
有名な例え話なので、知っている人も多いと思います。
ノミの実験です。
ノミをガラス瓶に入れます。
そのまま入れっぱなしにしていると、何度も飛んではガラスにぶち当たります。しばらく入れたままにして、その後、ノミをガラス瓶から出すと、ノミはもうその瓶の大きさ以上は飛ばなくなるそうです。(下記動画は3日間瓶詰めにしています。)
また、子象の話も有名です。
杭に結ばれたロープを子象の足につないで、その距離以上は行けないようにします。ある期間その状態を続けていると、ロープを取っても、その距離以上は行かなくなるそうです。
これを「学習性無力感」と言います。どうがんばっても望む結果が得られないことが続くと、「どうせ無理だ」「なにをしても無駄だ」と思って行動しなくなります。
一生懸命努力しても、それ以上はできないのなら、無駄な努力はやめてしまおうとあきらめます。邪魔していた障害が消えたとしても、それ以上できると思っていなければ、もうトライしなくなります。
多くの人が似たような体験をしています。なんどもがんばったけどできなかったり、「どうせむりだし、やめとけ」と言われ続けて、自分の殻に閉じこもったり。
どうせ無理なら無駄な努力はやめておこうと思います。最初は人に言われたかもしれないですが、いつのまにかそれに同意してしまい、自分で自分に言い聞かせて、制限を作ってしまいます。
では、ガラス瓶の大きさ以上に飛ばなくなったノミを、また以前のように飛べるようにするにはどうしたらいいと思いますか? 動画では、一生この状態だと言っていますが、方法はあるのでしょうか?
無力感から脱出する方法
それは、そのノミを飛べるノミの中に入れることだそうです。
他のノミが普通にぴょんぴょん高く飛んでいたら、そこではそのように飛ぶのが当たり前となります。できない方がヘンなのです。まわりに感化されるのか、また飛べるようになる、という話です。
人間でも同じ話があります。
これもよく取り上げられる話です。
ロジャー・バニスターは、1954年5月6日、オックスフォード大学のイフリー・ロードのトラックで、1マイルを3分59秒4で走り、世界で初めて1マイル4分を切る記録を打ち立てたことで知られています。
1マイル(1609km)走は、1923年、パーヴォ・ヌルミの4分10秒3の記録が出て以来、1マイル4分の壁が破られることはありませんでした。専門家は、人間の肉体では1マイル4分を切るのは不可能だろうといい、それが世界の常識となっていました。
ところが、イギリスのロジャー・バニスターはその常識に屈せず、1954年、1マイルを3分59秒4で走り、世界で初めて1マイル4分の壁を破りました。
するとおもしろいことに、その2ヵ月後にはジョン・ランディという選手が3分58秒0という世界記録を出しました。また1年以内には23人、その翌年には300人ものランナーが4分の壁を破ったそうです。
限界は肉体ではなかったんですね。
限界を作っていたのはマインドだったわけです。
「人間に1マイル4分内は不可能」という常識のため、その壁は打ち破れませんでした。が、それに挑戦したバニスターがその限界を打ち破ったとたん、みんなの「不可能」が「可能」に変わりました。
できるということがわかったらたくさんの人ができてしまった、、、。
人間のマインドのすごさと愚かさのいい例ですね。
信じれば救われる?
プラシーボ効果とも似ています。
プラシーボ効果は、薬でないものを「よく効く薬だ」と言って飲ませると病気が治る効果をいいます。薬が病気を治しているのではなく、患者さんの「治る」という意識が自己治癒力を活性化するのでしょう。
私たちは無意識的に「できる」「できない」を作っています。「できない」と思っている時点で、すでにできない予測をしていますから、いい結果はでないでしょう。
「やる前から『できない』と思うその理由は?」と問えば、きっと「実力や才能がない」「やったことがない」「自信がない」「できそうに思えない」と過去の実力や経験不足に照らし合わせて答えます。
バニスターも記録を破るまでは、その記録を破ったことはないです。
あたりまえの話ですが。
新記録は初めてその記録が出るから新記録です。
ということは、それまではその記録を出したことがないことになります。
少なくとも公式な競技の時には。
過去に「それができたかどうか」と、これから「それができるかどうか」には関係がないということですね。
セルフトークを、「できない」から「できるかも?」→「やってみようか?」→「どうにかなるかも?」→「きっと大丈夫」→「絶対できる!」→「できないほうがおかしい」→「やっぱりできた!」と少しずつでいいので変えていくといいです。
限界突破を試みる人たちとともにいよう
私たちの多くは、瓶の中のノミ、あるいは、ロープに繋がれた小象になっています。
限界を設定して縮こまっていますが、そんなものはもともとありません。
もしあなたのまわりの人たちが「学習性無力感」に陥っているのなら、その輪から出ることをお勧めします。影響されますから。
自分が作っている限界から飛び出す人たちの輪に加わりましょう。
自分が望んでいることをすでに実現している人たちと過ごしましょう。
自分がむずかしいと思っていたことを普通にしている人たちとともにいれば、ノミがまた飛び始めるようにあなたも本来の自分の力を発揮し始めます。
誰といるか、どんな環境にいるか?はとても大事です。
ガラス瓶の中で「こんなもんだよね」と慰めあうのではなく、すでに外で自由に飛び跳ねている人たちの仲間入りをしましょう。
悦月(えつき)